リカの冠


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 なんと!
 あのリカちゃんが妊娠したのだそうだ
 数日前のテレビでやっていた

 臨月状態にあるリカちゃんを買ってメーカに連絡すると
 赤ん坊人形と“おなかをへこませる秘密のキー”が送られてくるんだと!
 なんとまあバカバカしいと思いつつ
 子供のとき
 リカちゃんはうちにもいた
 もちろん私のものではない
 姉の持ち物である
 ところが
 あるとき私がリカちゃん好きであると疑われたことがある
 それが
 いま多くの人々の戒めとなり
 また
 時として悪徳政治家に都合よく使われるあの有名な教訓を生み出した
 “カールリカちゃん事件”(1971)である

 その日
 姉が居間に飾っていたリカちゃんの髪飾りが曲がっていたので
 私はそれを直してあげていた
 ちょうどそこに遊びに来た近所の友達が私を見て
 「わぁ〜い カールがリカちゃんで遊んでるぅ」
 と嬉しそうに叫びながら私のうちから飛び出して行った
 何としてもそのクソガキの口を封じねばならないと思った私は
 急いでヤツを追いかけ後頭部に跳び蹴りを食らわせ
 倒れたところを4の字固めから人間脱穀機への滑らかな展開で失神させた
 が
 それを見られた別の友達に
 「あんなにムキになるなんて逆に怪しい」とますます疑われ
 それからしばらくのあいだ
 リカちゃん好きのカールと呼ばれることになってしまった
 私は敢えて反論することなく
 事実に反するその風評が
 まさに風とともに過ぎ去ることをただただじっと待っていた

 私が疑われるような行為をしたことがそもそもの間違いなのだ
 疑われるようなことをしながら「違う」といくら言い張っても
 世間は理解してくれない
 疑われるような行為をしてはいけないのだ
 私はそれを

  リカの冠を正さず  (意味) リカちゃんの髪飾り(冠)を直したりすると
                     リカちゃん好きと疑われるから
                     髪飾りが曲がっていても直すべきではない

 という教訓として今も守っている

 ところで
 リカちゃんの子供のお父さん(つまりリカちゃんの男)は誰なのか
 みんな興味があるに違いない
 そのテレビでもやっていたのだが
 これがなんと!
 リカちゃんがついこの間まで付き合っていたのは
 ヒゲの生えたギリシャ彫刻風の男というではないか

 しかぁ〜し
 今度は私ではない
 絶対に私ではない
 何しろ私はあのとき以来

  リカの前でパンツを降ろさず

 という教訓を守り続けている
 疑われるような行為は決してしていない

 真相はこうだ
 移り気なリカちゃんはギリシャ彫刻風の男くんと遊んだあと
 フランス人の何某というプレイボーイにやられちゃって
 それでめでたく(?)妊娠ということになったらしい
 まるで元フジテレビアナウンサーみたいだが
 私としては疑いが晴れてホッとした



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